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『孔子の教え』1

ドラマ【孔子】より

 

老子:天が育んだ万物には盛衰があり 

   地が育んだ青草には栄枯がある 

   水は低きに流れ腹が減れば飯を食う これが大道だ。

   文王にも般を倒す意思があったかもしれぬ。

   機を見ていただけ。

   その頃 民の不満はまだ満ちてはおらず 武王の時に機が熟した。

   武王が怒っている民の前で声を出すだけで 般の王朝は倒れたのだ。

   民でも聖人でも ただ1人の 努力と情熱では仕方ない。

   文王になれても武王にはなれぬ。 

   聖人はむやみに動かない。 

   待つことを知っていて力を蓄えるからだ。 

   分かるか?  

 

孔子:分かりません。

 

老子:丘よ 私はずっとを説いてきた。

   だがお前はを語る。

   努力することは正しい。

   それはだ だが機を見極めることも正しい。   

   それがだ は本来一体で一軒の家なのだ。

   外をが囲むから中にができる。

   をまぜてしまえば 中には入れぬし もはや家ではない。

   私の宝は3つ 

    

   敢えて天下の先をなさずだ。

   とは領内の民を思いやり痛みを知ることだ。

   は自身が倹約すること

   天下の先をなさずは国との交渉では下手に出る。

   出しゃばらぬことと自然に任せることだ。

   自然に反しないのが国を治める大道 

   すなわち大道の源と言えよう。

   私は星空を眺めることがある。

   天の星は三皇五帝の前から存在していた。

   数千年後もそこにあるだろう。

   だが小さな虫たちはどうだ?

   虫の命はひと夏で終わりを告げる。

   何十年と生きる我らを見てうらやましく思うだろう。

   我らの命は入れ物に入ってるようなもの。 

 

孔子:入れ物? 

 

老子:そうだ、

   体は見ることができる形ある部分だ。

   だからこそ痛みや飢え不安や快楽を感じる。

   しかし 体の中にあるが指示を出しているのだ。

   いつか人が死んで入れ物がなくなると 

   体の中のと外のが1つに溶けあうだから

   形ある物は必ずなくなる。

   形のない物が永遠なのだ。

   固い物ほどもろく柔らかい物ほど長持ちする 。

   人は年を取ると歯が抜けるが舌は抜けずに残る。 

   舌は歯より柔らかいからだ。 

   書いた者が死んでも書の精神は永遠に残る。 

   だからが道の根本であり は道の表面なのだ。

   周の王宮の書庫には数百年分の書物がある。

   これを見守ることに私は人生を費やしある人を待ち続けた。

   道の教えを伝えたいと思っていたのだ。

   お前が待ち人だった。

   よかった。